2013年08月12日

『若者のすべて』

今年も琵琶湖の花火大会はきれいだった。

 暗闇にゆらゆらと伸びる光の筋が上のほうで消えてなくなる。不安になるとすぐに、音もないまま光の粒が夜空に弾ける。溜息のような歓声があがると、一瞬遅れてお腹を揺さぶる「どーんという」大音響。このスローモーションと再生の繰り返しのような光景が面白いのかもしれない。

 高校3年の夏に剣道部の仲間たちとこの琵琶湖花火大会を見に行った。6月のインターハイ予選に1回戦で敗退し引退の身分。普通の高校3年生ならそれから受験勉強が始まり、花火大会どころではないはずなのだが、系列の大学に内部進学することが決まっている僕らはふらふらと夏を過ごしていた。

 僕を含めて男は4人の同級生で、後輩の女の子を2人連れて行ったはずだ。確か、その後輩の女の子の一人がKのことが好きでKを花火大会に誘ったのだが、Kはそれほどその女の子のことが好きではなかったので、仕方がなく僕らも誘って花火大会に行くことになったのだ。

 明るいうちからなぎさ公園のあたりに場所取りをして、他愛もない話をしながら花火が始まるのを待った。剣道部に入部した今年の1年生の中で誰が一番強いかという話。自動車の免許を夏休みの間に取りに行っても高校にばれないかという話。進学する大学の学部が草津に移転して迷惑だという話。大学では剣道を続けるのかという話。どうでもいい身近な話題と、身近な将来の話だけであっという間に時間が過ぎた。花火が始まっても花火の音にかき消されないよう大きな声でしゃべった。僕たちは身近なことだけで手がいっぱいだったのだ。

 フジファブリックというバンドの唄に「若者のすべて」という唄がある。迷いながら生きている語り手が夏の終わりの花火を見あげて、いつかこの光景を思い出してしまうだろうなと、ふと思うそんな唄である。

 僕はいまだに琵琶湖の花火を見に行くたびにこの高校3年生のこの夏の景色がよみがえってくる。そして若者だった自分と、若者だったあのころの仲間たちを思い出す。身近なことの積み重ねだけで大人になっていくんだということはそのうちにわかることだし、だから毎日を頑張っていくんだということも。
『若者のすべて』

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Posted by すずとも at 10:55│Comments(0)その他
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