2013年06月10日

僕とギターの物語 オービル社製フライングV①

 結局、修士課程の2年間で研究者の道はあきらめた。

 要は才能不足だったのだが、その中でも決定的に英語力がなかった。そもそも大学院の入試科目にも英語はあるのだが、これをクリアするのに相当苦労した。中高大一貫校でまったく受験勉強ゼロな僕は決定的にボキャブラリがなかったので、入試の半年前に「でる単」を購入してひたすら単語の暗記に励んだ。受験勉強をしないツケは、結局払わせられるのだ。
 そして研究者になるには、ひとつの物事に徹底的に向き合う集中力も足りなかったかもしれない。これは、どんな仕事にも、趣味にも、そして人生において一番大事な能力だと思う。集中力がなければ能力は発揮できないし、たとえ能力は平凡でも集中力さえあれば、それなりにデキるやつになれる。

 で、気がつけば修士2回生の秋から大原簿記専門学校の税理士コース法人税科に通いだしていた。いまさら一般企業に勤めることなど到底考え付かなかったし、大学院で会計系の修士号を取ると税理士試験の簿記論と財務諸表論の2科目が免除になるという打算もあった。研究者の道はあきらめたとはいえ、それなりに「デキルやつ」と自惚れていた当時の僕は、残りの税法3科目の税理士試験ぐらいはちょちょっと勉強すれば合格するだろうと思っていた。
それが、甘かった。

 思い知らされたのは初めて大原の授業を受けたときのことである。税理士の税法科目の試験は理論編と計算編の2つに分かれているのは知っていた。当然、税金を計算するには法的な根拠が必要なわけであり、そのため税法の解釈を問われているのが税理士試験の理論編だと思っていた。ところが、O原の講師の先生は税法の条文を少しだけ要約した参考書(大原では「理サブ」という)の、該当ページを広げると「はい、次回までに条文を一言一句そのまま覚えてきてください。」と言い放った。

 え、丸暗記?そうなのである。税法の理論は暗記科目なのである。条文を単元ごとにまとめたものを暗記していき、最初は1週間に1ページだけ暗記しているのを、1週間に2ページ、1週間に4ページと言う具合にだんだん暗記量を増やしていき、本試験直前には100ページぐらいまで暗記することになる。しかも1科目だけで。これを受験生たちは「理論をまわす」と表現しており、
「俺もう40(ページ)ぐらいまわしてるで。」
「うそ、すごいな。おれまだ15(ページ)ぐらいやで。もう試験に間に合わんから、ヤマはりにかけるわ。」という会話が、試験直前にはいたるところで交わされるのだ。

こうして、僕の「理論をまわす」日々が始まった。こいつは税理士試験が終わるまで延々と続けなければならないのだ。無間地獄とはこのことである。

大学院を卒業すると、晴れて無職の週2日だけ専門学校生となった。そんな心がすさんでいく日々の中で買ったギターがオービル社製のフライングVである。当時マイケルシェンカーが大好き(もちろん今でも)だったので、シェンカーの愛器であるフライングVを購入したのだ。もちろん無職専門学校生が大金を持っているわけがなく、ハードオフで3万円ぐらいで購入したパチモンである。このオービル社製のギターは当時、日本製と他国製のやつがあったが、こいつは間違いなく日本製ではない。みてくれだけで買ったギターなのでライブで使うことは想定していない。

 そもそも、僕はこんな変形ギター持ってもまったく似合わない。

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Posted by すずとも at 08:45│Comments(0)僕とギターの物語
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